yamamomo

fukubella


 ふくべらは全くもって仕事をしているように見えない。
日がな一日壁に寄り掛かっているだけで、端から見るといつも休憩をしているようである。へらといってもバターを伸ばしたり目玉焼きをひっくり返したりといったへら属が得意な仕事ができるわけでもない。
それなら何故ふくべらなどという名前なのかと言えば、役目は服を掛けておくことなのに、風貌はどこから見てもへらにしか見えないので、いつの間にかそう呼ばれるようになったのである。

fukubella


 そんなふくべらも何かと家人に重宝がられはいるのだ。 玄関で脱いだ外套を掛けるのに実に具合が宜しい。
座敷へ客のあるときは長押にハンガーではどうにも具合が悪いので、ちょいと奥まで連れて行かれる。最近では毎年坊やの背丈を脇に刻まれるなど、全くへららしくない使われ方までされて、ふくべらはすっかりこの家の一員なのである。
 今日はまだ出番が無いと見えて壁に寄り掛かったまま、またのんびり昼寝をしている